HOME    diary FILM  BEADS   野菜ビジュー   エコ学   漢方   料理本

脱成長の豊かな地域(脱成長クラス) 講師:大江正章さん(コモンズ代表/ ジャーナリスト/PARC 理事)

ほぼ講義内容のレジメが用意されていました。また、詳しくは『地域の力』 (岩波新書)にも書かれていることも。下記はレジメに書かれていること、講義中メモしたしことなどに拠ります。
  1. 21世紀は脱成長社会・農的社会
    1 都市型社会に未来はない
    1960年代以降の40年間(食料・エネルギー外部依存社会)が歴史的にみて異常
    経済成長なき社会発展は可能か(セルジュ・ラトゥーシュ)
    脱成長の時代(社会的企業の時代)
    おカネの秩序からいのちの秩序へ
    産業の論理から暮らしの感覚へ
    自給できないものをどんどん摂取するようになった
    2 若者世代の価値観の転換
    人間と環境にやさしい社会を志向---団塊世代は嫌いだ!
    減速して生きる
    都市から農村への人口移動
    都道府県幸福度 石川、福井、冨山が上位
    半農半Xという生き方
    非農家出身の新規就農者の急増---1985年66人、95年251人、2006年2180人
    1980年まで参入する道なし、1985年はじめてデータを取り始める
    新規就農者の多くがめざすのは有機農業
    50代、60代は大きな会社で働き車に乗る、20代は成長志向と無縁、話が合わないことが多い
    昔ながらの日本人の知恵は70才以上でないと持っていない現状
    3 日本人の意識の変化
    ターニングポイントは1980年代なかば
    定年帰農・老後のIターン
    田舎ツーリズム
    市民農園・家庭菜園(200万人)の人気急上昇 農家人口は260万人で数年後に逆転するはず
    一人当たりGDPは伸びても生活満足度は上がらず
    ものの豊かさから心の豊かさへ
    3・11の衝撃
      国内版フェアトレード(公正な交易)
    生産者が再生産(プラスα)できる価格の保障
    日本版CSA・CSF(Community Supported Agriculture/Fishery)を広げる
    野菜・米・魚などの代金を消費者が1年分前払い(労働による一部代替あり)

  2. 地域自給のネットワークを創る社会的企業---島根県奥出雲地方
    1

    地域に根付いた牽引車の存在 
    木次乳業の佐藤忠吉
    モットーは半農半加工の独立自営農民
    自給飼料を重視した中規模の酪農
    木次乳業の売り上げ 80年6億→06年16億、従業員90年40名、06年90名
    販売先は消費者グループからデパートまで、県外が6割、農協とも部分提携
    アイスでは農協と組む。本来役割を果たすべきところ。生協はむやみにでかくなろうとしている。超少数派でもダメだが。
    片足は「資本主義の濁流」の中に入れ<経済>、もう一つの軸足は清流の中に入れる<理念>
    理念、経済、相反するものをどうやって両立させられるか。
    「人生、表玄関と客間ばかりではない。そこばかり見てまっすぐすぎる人が多い」、運動に対する批判
    「自分のこだわりだけの人、他人をさばく人はダメだけん」、
    「裁判官はダメです。お坊さんが出ないと」自分の会社だけが儲かるのではなく、地域が振興しなければならない

    第6次産業、昔から実践してきた。牛乳、チーズ、アイスクリーム。乳牛ブラウンスイスを飼う。

    農業基本法ができ、「牛ばかり飼いなさい。」、「キャベツ、レタスばかり作りなさい。」、「ミカンだけ育てなさい。」と行政が指導。それまで、牛、鶏を飼い、循環型農業をしていた。

    2 小企業の連携
    風土プランの創設 foodとかけている
    地域資源を活かし、安全な素材と味にこだわった10社
    醤油・味噌・製麺・製茶・製油(菜種油)など多様な業種 地域の資源、安全性、無農薬
    営業・宣伝を受託
    3

    自治体行政や流域とのつながり
    食の社=自立循環型のシンボル施設の建設---国産素材の豆腐・パン・ワイナリー
    町外出身者も多数
    斐伊川をむすぶ会の結成と斐伊川おろちの販売
    上流で酒米を中流の伏流水で酒を作り、下流の消費者が飲む

    グリーンツーリズム先駆け

    土日、広島からお客が来る

    cf:葉っぱビジネス(上勝町)、柚子ドリンク(高知)

    リーダーの存在が大切。役所の産業課で意欲をもって仕事をしている人、教師、郵便局に。


  3. 新たなコミュニティを創る
    都会では社縁…60才定年でなくなる。新たな知縁・血縁・スポーツ縁・生協縁(個配多くなり廃れる)
    ある一定の距離の中で、共通の趣味・志向のゆるやかなつながり。その中では、話が合う、問題・関心が似ている、幸せに生きられる価値がある、一つとして農縁

    1 畑のカルチャーセンター
    農家が発送した農家が教える体験農園
    1区画30u、約25品目を栽培
    農家は週3回抗議、生徒は週1回受講
    低農薬が指導の基本
    生徒は3.1万(4.3万)の支出で8万相当に
    おカネだけではない高い満足度
    食卓から自給率向上
    練馬区内に15農園、約1600区画
    東京都内3区19市1町に70農園、y区42007区画
    第38回日本農業賞大賞受賞(09年1月、練馬区農業体験農園園主会)経営の賞
    2 農縁コミュニティ
    都市生活者(特に定年後のサラリーマン)の趣味をとおしたゆるやかなつながり
    地縁・血縁から知縁・結縁へ
    老後を支える地域の共的セクター
    第二の人生のステップボード
    3 コミュニティ・ビジネスとしての体験農園 自治体が立ち上げ時補助
    農家の平均粗収入10aあたり113万(キャベツ年間2回転50万、直売80万)
    経費率は市場出荷の6割程度
    後継者の安定的確保
    市場出荷から地産地消へ
    相続税納税猶予制度が適用
    最近増えたブルーベリー農園---「いい加減」な農家も残す
    4

    都市農業のフルコース---白石農園
    変身した全青協委員長
    約30品目の中品種中量栽培---庭先販売・直売・スーパーとの契約
    農業体験農園(大泉風の学校)
    NPO畑の教室(総合学習の場、練馬大根・キャベツ・小麦などを年間通して体験)
    学校給食への野菜の提供
    精神障害者の受け入れ(東京都の協力事業所)
    23区で稀な農園レストランの経営(シェフは農園体験農園の生徒)
    誰も指導してくれない市民農園とは違う
    募集が春、無農薬では難しい夏野菜作りからはじまる。そのため低農薬で。

    限りなくサービス産業に近い。30u。70〜80%野菜を自給できる。


  4. 豊かな脱成長の地域を創る7つの条件
    1 時代認識---地域力・田舎力の時代
    魅力がある地域には人が訪れる
    「ないものねだり」から「あるものさがし」へ 地元学 70代、80代は知恵の宝庫
    交流人口を増やす
    2

    社会的企業・ワーカーズコープ(コレクティブ)を創る
    出資者・経営者・労働者
    まっとうなものを作り広めるという倫理観と、適切なビジネス感覚
    「雇われる」「就職する」から「社会に必要な仕事を自ら創り出す」へ

    仕事を創る、仕事起こし

    3

    原点は地元が豊かになること
    自らがより豊かに暮らし、地元消費の残りを都会へおすそ分けする
    地域資源とおカネの循環力を高める
    規模を大きくしない
    単価を安くしない

    稼ぐことだけが大事ではない

    4 よそ者(Iターン)と出戻り(Uターン)の力を活かす
    多くは都会育ちのよそ者が地域の魅力を発見し、全国に伝える
    第一次産業の復権や循環保全を重視するよそ者の価値観を6次産業化に活かす
    よそ者を受け止める出戻りの包容力---都会と田舎をつなぐ
    5 おカネだけで動かない
    短期的に見れば決しておカネにならないことも楽しみながらやる
    知恵者は知恵を出し、退職者は時間を提供し、体力のある人は体を動かす
    目先のおカネを惜しむと将来の富を失う
    6 自給的部門を大切にする
    米と自給野菜の耕作をやめない(農村)
    市民耕作を始める(都市)
    そこそこの現金で暮らせる生活のベースを形づくる
    7 新しい豊かさのモデルを発信する
    人と人の関係性の豊かさ
    世代間の連携
    地縁・血縁から半地縁・非血縁・知縁・結縁へ

 

<参考>小利大安の世界を地域へ広げる---埼玉県小川町

 

 

pageup