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食品総合研究所 緊急シンポジウム

----放射線物質の食品影響と今後の対応----

主催:(独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所

共催:フード・フォラム・つくば

日時:2011/04/18 13:00-15:40

■講演
1.放射性物質の基礎を学ぶ -誤解をとき、無用の不安を減らすために-
小林泰彦((独)日本原子力研究開発機構 量子ビーム応用研究部門)
以下、プレゼン資料より抜粋

ベクレル(Bq)=放射能の強さを表す単位

クレイ(Gy)=放射線を浴びたときに物体が吸収したエネルギー量を表す単位(吸収線量)

シーベルト(Sv)=放射線を浴びたときの人体への影響度を表す単位(実効線量)

  • 放射線・放射能は自然界の一部
  • 天然自然の放射線や放射能は安全で、人工のものは危険ということはない
  • 安全かどうかは、放射線の量による

    (口頭にて、放射能はできるだけ浴びないほうがよい)

  • 体の中の細胞が傷つく度合いによる
  • 菌ではないから感染しない
  • 放射能・放射線は簡単に測れる
  • 米ソ冷戦時代の核実験で経験ずみ
  • 最大の悪影響は不安ストレスとパニック

しきい値なし直線伝説(LNT仮説)

現在の放射線防護体系の基本となる考え方

どんなにわずかな線量であっても、それなりにリスクは増加する、と用心深く仮定して、被曝を管理

本当に「放射線はどんなに微量でも有害」かどうかは、疫学調査でも分からない

チェルノブイリ20年後の結論と教訓

・作業した消防士ら134人に急性放射線障害、3ヶ月以内に28人が死亡、その後20年間に19人が死亡

・危険を知らされずに放射性ヨウ素で汚染されたミルクを飲んだ子どもたちの中から、通常の10倍の頻度で小児甲状腺がんが発生、発見された患者数は約4000人以上。多くは手術で治り、20年間の死亡患者は9〜15名

・白血病を含め、その他の病気の増加は確認されていない

・最も深刻な被害は、社会経済的な影響、不安ストレスなど精神的な障害、不必要な妊娠中絶の増加

2.食品を通じた放射線の健康影響−これまでの知見と今後の対応- 

滝澤行雄(秋田大学名誉教授 内閣府食品安全委員会専門参考人)
以下、プレゼン資料より抜粋

食品中の放射能制限の基準

厚生省 1986年10月、ECの基準などを参考に暫定基準を定める…輸入食品に対する勧告値

食品からの放射能除去

  • <野菜>果菜(キュウリ、ナス)水洗いで90Srの50ー60%
    葉菜(ホウレンソウ、シュンギク等)煮沸処理(あく抜き)で137Cs、131I、106Ruの50ー80%酢漬け(キュウリ)放射性降下物の90%
    原子力環境整備センター、1994
  • <水道水、牛乳からの除去>

    飲料水中の123Iはフェロシアン化鉄により90%除去できるが、他のフェロシアン化陰イオン樹脂では低い。

    牛乳中の123Iおよび123IO3はフェロシアン化陰イオン樹脂により、沸騰時間30分で80-85%が除去される。

    渡利、今井、大槻ら:…、1988

  • <米麦からの除去>

    Sr-90、Cs-137は穀類の外皮(もみ)に多く、また、玄米の胚芽に集まっている。

    国立衛試、1961等

  • <肉からの除去>

    食塩水と硝酸カリを含む水溶液に、重量比の1/8にあたる汚染肉を1週間浸しておくと、137Csが徐々に減っていき、最終的には初期濃度の約5%にまで減少。

    あらかじめ肉を凍結しておき、回答して4-5時間食塩水処理(10%食塩水)するだけで、90-95%の137Scを除去。

    Z.Franic et al.:Health Phys.,65,216-217,1993

食品・飲料水等の摂取に係る暫定基準に『国際基準(IAEA)』の導入(提言)

・緊急的、早期の国際基準

・中・長期の国際基準

■パネルディスカッション

コーディネーター:堀口逸子 順天堂大学医学部、内閣府食品安全委員会リスクコミュニケーション専門調査会専門委員
パネリスト:小林泰彦 講師
滝澤行雄 講師
小島正美 毎日新聞生活報道部編集委員
川本伸一 食品総合研究所 放射性物質影響WG委員長、食品安全研究領域長
等々力節子 同WG委員、食品安全研究領域上席研究員(食品への照射研究)

講演を聞いた後、聴衆からの質問用紙からのQ&Aタイム

Q:暫定規制値根拠について

A:セシウムでいうと、EU1000ベクレル(乳児400ベクレル)に対し、日本は200ベクレル。EUはチェルノブイリの影響で、これなら大丈夫というのを実地調査し数値を出した。日本はそれを参考に作成。もともと対輸入食品で作られたもののため厳しい。

 

Q:ヨウ素とセシウム、それだけでよいのか。

A:食べもので、短期で重要なのはそれだけ。長期になると、ストロンチウム摂取に気をつけなければならない。中長期の国際基準を出すことを検討しなければならない。

 

Q:酢漬けが放射能物質を除去できると発表があったが。

A:原子力環境整備センターの文献にあった…。

 

Q:葉物、土、根菜、種、地下水と汚染されていくか。

A:はい

 

Q:加工食品の放射能物質の基準値はどうなっているか。

A:基準値ない。但し、加工品、外食は厚労省管轄になり、製品に基準なし。

ベクレルで測るのは、車の速度と同じで、基準値を上回ると危ない、下回るなら大丈夫なわけで、シーベルトで換算すべき。

  • 講演者の発表内容について、チェルノブイリ被害について過小評価している感あり。(IAEA発表の改訂前使用か)
  • パネルディスカッション時において、白熱した雰囲気から遠い感じの沈滞ムード。檀上の半数は受動的参加。放射線物質の食品影響シンポジウムとなると、各方面での幅広くそして深い知識、情報力をもち、内容を把握している人でなければ、語れない。そういった意味で、今回、オールラウンドに語れたのは新聞社の人のみ。なお、農業部門、食品部門からの専門家が入っておらず、残念。いたかも?いくつかの質問に、私は知らない、と答える回数が多く、専門外となると全く関与せず、興味ももたず、というのはどういったものなのでしょうか。やる気のなさを感じました。少しでも首を突っ込めば、原子力反対派に手助けをするような結果になるからでしょうか。
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